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私論-「指導と評価の一体化」

「基礎・基本を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成」を目指し,「総合的な学習の時間」の導入を柱に据えた前教育課程が施行されたのは2002年(平成14年)のことでした。
導入に当たって,「個に応じた指導の在り方」や「絶対評価の在り方」についての議論が盛んになされました。その中で,評価する過程で得られた情報をフィードバックし,指導の改善を図っていくという「指導」と「評価」の有機的な関わりという意味での「一体化」が強調されました。
私がこれから論じようとする「指導と評価の一体化」は,上記のような格調の高い内容ではありません。
「英語は嫌い,苦手」「日本人なのになんで英語を勉強しなきゃダメなの」と自信をなくしたり,あきらめている子どもたちの立場に立って「指導と評価の一体化」とはどう在るべきか,少し考えをまとめてみたいと思います。
「何を今さら」と思われる方も多いとは思いますが,おつきあいください。

1 授業で指導したことを評価する

教師の立場からすれば,授業で指導したことを評価する
生徒の立場から言うならば,授業の中で学んだことがどの程度身に付いたのか評価される,ということでなければなりません。
そう考えて,これまで実践してきました。

授業の中で指導していないことを評価の対象にしてはならないと思います。
よく副教材として使っているワークブックの問題を定期考査に出題する先生方がいますが,私は定期考査で行う評価の対象とすべきではないと考えています。
「宿題として家でやるように指示していたのだから,理解できてなければおかしい。宿題をやらない生徒が悪いのだ」というのは,教師の思い上がりだと私は思っています。

それは,私が考える「学ぶということ」の意味と密接に関わっています。
私は「学ぶということ」は,知識・理解を深めたり,技能を高めたりすることに加え,「地道に努力することの大切さ」を学び,「努力を正しく評価することの大切さ」に気づくことだと考えています。

私の教科は英語ですが,学年が上がるにつれて「英語は苦手」「どうせ英語なんて分からない」という諦めてしまう生徒が多くなります。
授業での指導をとおして,「どうせ無理」という生徒の先入観を払拭し,「コツコツと努力すれば,必ず力はつく」という自信を身に付けさせたいと,いつも考えています。


・ 授業に真剣に取り組み,家庭でさらに復習し,理解を確実にする。
・ 教科書の音読を繰り返し行い,しっかり読めるようになる。
・ 題材の理解を深め,自らの問題意識を研ぎ澄ましていく。
・ 習った言語材料を使って,自分の感じたことや考えを英語を使って表現していく。


生徒がこのような学習に本気で取り組み,教師も生徒の学習に真剣に向き合い評価する。
この繰り返しによって,
「やればできるんだ」
「努力は報われる」
「自分を変えることができる」
と生徒が実感し,次のステップに意欲的に進んでいくような,「指導と評価の在り方」が問われていると思うのです。

「学ぶこと」によって「努力することの意味を学び,実感できる」ような授業づくりを行い,生徒の努力を適切に評価することこそが,教師が求め続けなければならないことだと思います。

2 授業に向かう私の基本的な考え

授業に向かう私の基本的な考え-モットーは以下のとおりです。

① 授業で教えたい事柄を徹底的に絞り,焦点化し,提示する。
② 授業で伝えたい中味や質をしっかり吟味する。
  ---中学生は本物とニセモノを峻別する力を持ち始める年代であり,またその力を育てていきたい。
③ 授業で指導したこと-生徒が授業で学んだこと-を適切に評価する。
  ---「指導と評価の一体化」を口当たりのよいキャッチコピーにしてはいけない。
④ 生徒が安心して打ち込める授業づくりを心がける。
  ---「授業をきちんと受けていれば力がつくし,定期考査でも努力に見合った成績が上げられる」「授業が分かり,楽しい」
⑤ 「指導と評価の一体化」は「基礎・基本」の定着を確実にする。
⑥ 同時に,「指導と評価の一体化」は,より質の高い学習に対する意欲をも確実に高めていく。



3 「指導と評価の一体化」の具体的な実践例

生徒からみた学習の基本的な流れ : 【文法プリント】→【まとめテスト】→【定期考査対策プリント】→【定期考査】


① 身に付けさせたい基礎・基本を見極め,5つの基本文に絞込み,【文法プリント】を作成する。
  5つの基本文をマスターすれば,英語の力が着実に身に付くことをしっかり伝えておく。
② 教師が言う5つの基本文を聴き,その意味や英訳を考え,手を挙げて発表する。
③ 友だちが発表した正しい答えをみんなで確認し,5つの基本文の意味や英訳を,全員で繰り返す。
④ 英語がどちらかというと苦手だと考える生徒は,この段階でノートにメモをとってもいいことにする。
⑤ 全員で確認した答えを思い出しながら,5つの基本文の意味や英訳をノートに書く。
⑥ 5つの基本文の意味や英訳を黒板に出て書き,みんなで確認する。
  (この時点で,英語が苦手な生徒も自信をもって発表できるようになっている!)
⑦ 5つの基本文の意味や英訳を,家庭でも繰り返し声に出して言ったりするように指示する。
⑧ 単元の終わりに【まとめテスト】を行い,その中でも5つの基本文の定着を促す。
⑨ 生徒の学習意欲を喚起し確実な定着を図るために,定期考査の2週間前には【定期考査対策プリント】を配布する。
⑩ 【定期考査】の大問に,試験範囲で学習したおよそ50の基本文から15問出題する。配点は1問2点とし,確実に学習すればこの大問だけで30点はとれるように設定する。

流れ1 【文法プリント】 (新出文法の導入時に取り組む)


流れ2 【まとめテスト】 (単元の終わりに行う)

◇ 【文法プリント】の5問すべてが出題されている。

流れ3 【定期考査対策プリント】 (考査2週間前に配布する)

◇ 考査対策として,【文法プリント】の5問すべてと【解答例】があらためて提示されている。


流れ4 【定期考査】

◇ 【文法プリント】と【まとめテスト】【定期考査対策プリント】で繰り返し練習した5問から,2問出題されている。





生徒にとっての「指導」と「評価」の一体化とは,「授業で習ったことや家庭で学習したことがしっかり評価されること!」

ありていですが,これが私の結論です。

どんなに努力しても,その努力したことが適切に評価されなければ,じきに学習意欲は失われ,生徒の表情から輝きが消えていきます。
反対に,「授業をきちんと受けていると,よく分かり,力がついていく」と生徒が実感できれば,苦手意識をもつ生徒も3か月もあれば「英語大好き人間」に変わることができると,確信しています。