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『英語科教育を変える6章』(インプット理論からのメッセージ)(森永正治)抄訳

英語教育叢書 『英語科教育を変える6章(インプット理論からのメッセージ)』
森永正治著 大修館書店

日本の学校では最初からほとんどすべてを英語を使って授業を行うようにすべきである。
文法などは「習うより慣れよ」という姿勢が大切である。

→ Input Theory

Natural Approach = インプット理論による指導法 = 代表 Stephen Krashen

序章 インプット理論概説

(1) インプット理論仮説 The Input Hypothesis

① 理解可能であること  [i+1]……[ interlanguage + 1]
② 興味深く,しかも自然であること
③ 文法項目中心に配列されたものでないこと
④ 十分な量であるべきこと

(2) アウトプットの発達段階

SPEAKING

① ジェスチャーなどの言語外(nonverbal)の伝達による応答
② Yes. / Mine.などのような1単語による応答
③ My small cup.のような2,3語のよる応答
④ On the desk.のようなフレーズによる応答
⑤ It's Harry's.のような文による応答
⑥ より複雑な談話(discourse)による応答

WRITING

① Copying 書き写し
② Reproduction 再現
③ Recombination 再構成
④ Guided writing 誘導作文
⑤ Composition 作文

(3) 「書く能力は,みずから進んで楽しみや興味のために大いに読書することによって身につく」 -Krashen

(4) Sufficient English Exposure

(5) Input理論に基づく授業とは

① 動機づけ(Motivation) 05分
② 復習のインプット (Review Input) 10分
③ 新教材の耳からのインプット (Listening Input) 15分
④ 新教材の読解によるインプット (Reading Input) 10分
⑤ 創造的発表活動 (Creative Input) 10分
⑥ まとめと宿題 (Consolidation & Assignment) 05分

第1章 Why? 何のための英語科教育か

(1) 文法指導はしなくても大丈夫 → 文法は自然に内在化されるものである

(2) コミュニケーションの3つの型

《幼児の母語習得過程》

① 一方通行型
② 制限付き両面通行型 … input理論では①②を重視する
③ 完全両面通行型 … ③はあせらず追求する

「十分にインプットを浴びることが,アウトプットの必要条件である」

(3) 求められるインプットの条件

最適なインプットとは

① 理解可能であること
② 興味深く,しかも自然であること
③ 文法項目中心に配列されたものでないこと
④ 満足のいくほど多量でなければならないこと

(4) コミュニカティブ・アクティビティへの辛口批評

「下手な発音による情報集めゲーム,道案内,挨拶,幼稚な『ごっこ遊び』に堕しないこと」

第2章 What? どんな英語を教えるのか

(1) インプット理論と教科書

文法中心でなく,コミュニケーションを第一義とした理解可能な興味ある言語材料を多量に与えること

(2) リスニングにおいて,文法はさほど重要ではない!重要なのは語彙と背景知識!

教科書の英文をどのようにしてインプット理論を生かせるリスニング教材につくりかえるか

4つの原則

① 説明の原則 教師の立場から本文を説明しなおす
② 問いかけの原則 英語を聞かせながら学習者に問い掛ける――interaction
③ 拡大の原則 母親が幼児に話しかけるようなケアテイカー・スピーチ(caretaker speech)などの手法を使って,教科書の内容を易しい英語で言いなおす
④ 既成資料活用の原則 教師用指導書や授業案集等,いろいろな身の回りの指導資料をなるべくたくさん活用して,より一層豊かな内容のインプットを工夫する

(3) できるかぎり本物の教材(authentic materials)を準備する

(4) リーディング教材 「i+1」

① Skimming … 飛ばし読み 文章の概要をつかめば良い
② Scanning … 拾い読み 特定の情報を探して読む
③ Extensive/Rapid Reading … 速読 必要に迫られて短時間に大量の文を読む
④ Intensive Reading … 精読 内容を吟味しながらていねいに読む

(5) 語彙指導-もっともっと語彙数を増やしても良い

日常的に接する外来語は極めて多い
EX: 筋肉マン ギブアップ,ネプチューンマン,タワーブリッジ,シングル・マッチ,スカル・クラッシュ,パートナー,スペシャル・ホウルド,カット,パワー,ダイアモンド・パワー,クロス・ボンバー,…
EX: 小学校高学年の教科書に表れた外来語の数は-およそ950語(うち,英語起源のもの 720語)

(6) 受容語彙と発表語彙

題材を学習者の知的レベルに対応し,興味あるものにしようとすると,必然的に使用する語彙の範囲は広がる。
題材からのメッセージのインプットが強いと,一見「難しい」語でも,簡単に覚えてしまうのが,若い中学生の特徴である。学習者の潜在的能力に注目する必要がある。

(7) クラッシェンのリーディングに関する考え方

① 内容が平易で,読んで楽しいもの
② 内容理解に重点をおいたCheck of Understandingなどの練習問題
③ 学習者の持っている予測力・想像力・雑学的知識などを活用する工夫
④ 英語を使って知的に遊ぶ方向

(8) 中間言語と中間文法という考え方

① Interlanguage … 目標言語に到達する途中の段階での言語
② Interlim Grammar … 目標言語に到達する途中の段階での文法

中間言語や中間文法を積極的に認め,評価して,学習者のmotivationを高めるようにすることは極めて大切である。

(9) 「沈黙の時間」(Silent Period)

インプット理論の基本原理―――「理解は表出に先行する」(Comprehension before Production)
口に出して言うことを要求されない学習は,生徒の情意フィルターを低い状態にし,安心してインプットに耳を傾ける学習である。

Input
Silent Period

Incubation Period(潜伏期間)

Production
ひたすらインプットを蓄えたあとで爆発的にしゃべり出す

(10) 情意フィルター(Affective Filter)---「興味」を喚起する方法

① 困惑するような状況を除去すること
② 成就感・達成感をもたせること
③ 競争心を喚起すること
④ ゲーム的練習問題を与えること
⑤ 教師と学習者との人間関係をよくすること
⑥ 多様性に富んだ活動内容を取り入れること

(11) パタン・プラクティスに対する考え方

① 自発性は正確さより重要! Spontaneity is more important than accuracy.
② 意思伝達意欲(communicability)を第一義にする思い切った表現練習の機会を与える
③ 不自然なパタン・プラクティスはほとんど行わない

(12) 誤りの訂正

インプット理論

① 学習者の誤りを訂正するのは意味がない
② 言語習得の面では人間は間違いを通して成長する動物である
③ 「失敗するのが当たり前」「間違っても平気」というリラックスした雰囲気が英語学習の初期の段階から教室にあふれていることが大切