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「英語嫌い」をつくらないために

1 あなたは「英語嫌い」をつくっていないか!?

私の英語授業づくりの原点は,2002年3月に急逝された若林俊輔先生との出会いにあります。
中学時代に英語につまずき,「英語嫌い」を自認していた私にとって,「教科教育法」の講義の中で先生が話す一言一言は,「その通り」「なるほど」と得心のいくことばかりでした。
公立中学校や高等専門学校でも指導経験のある先生は,「英語嫌い」を大量につくり続ける英語教育の現状を強く憂え,「君たちは英語を教わったように教えてはいけない」が口癖でした。

歯に衣着せぬ率直な語り口。
人懐こく温かい眼差し。
ご自身が主宰する研究会に,気軽に学生を誘ってくれる気さくな人柄。

学習者の心理をよく理解し,学習者に寄り添った指導の在り方を具体例とともにふんだんに示してくださいました。
先生からたくさんのことを学び,英語教育に関して考えるときはいつも,「先生ならどうされるだろうか」と考えてきました。

2016年には「英語は『教わったように教えるな』」という書籍が,研究社から出版されました。
帯には「『若林流』論争的英語科教育法!」のサブタイトル。
懐かしさに,一気に読み通しました。皆さんも是非ご一読ください。

「英語嫌い」をつくり続ける指導例 1

先生は「英語嫌い」をつくり続ける具体例として,次のような問題をとりあげて,お話されました。


問1 次の英文の(   )に適切なbe動詞(am,are,is)を入れなさい。

1  I (     ) a doctor.
2  Mike's parents (     ) very busy.
3  She (     ) twelve years old.
4  Ken and Mary (     ) good friends.
5  Their house (     ) near here.



皆さんは,問題をご覧になって,どんなことを感じられましたか。
若林先生は,この問題に関して二つの問題点を指摘されました。

(1) 5つの英文は互いに何の関連もなく,メッセージ性のかけらもない
(2) 学習者をいたずらに混乱させるばかりでなく,系統的な理解を妨げている

さらに,

実際のコミュニケーションで交わされる話し言葉や新聞,書籍などで,このように主語が次々に入れ替わり,しかも脈絡のない支離滅裂な英文が現われることはない
何のためにこのような問題を出題するのか分からない。

と話されていました。

以来,content-centered を強く意識し,メッセージ性のある英文,生徒の心に響く英文,英文のニュースサイトから引用した文など,生きた英語を生徒に届けるように心を配ってきました。

「英語嫌い」をつくり続ける指導例 2

また,

英語教師は例外が好き
試験でよく出題される 【 例外 】 を教えることが,学力を付けることだと勘違いしている。

とも指摘されていました。

「そうか,それで私は英語が嫌いになったんだ」と,妙に納得できたものでした。

皆さんも,思い当たることはありませんか。たとえば,

名詞の複数形を教えた直後に,実は children や women のような例外もあるんだ。
とか,
規則動詞の過去形を教えた直後に,実は go や eat や speak のように不規則に変化する動詞もあるぞ。

というふうに。
「高校入試でつまずかないように」との老婆心から,すぐに 【 例外 】 があることを教えて,小テストや定期考査で出題していませんか。

英語を第1言語とする子どもたちも,自分なりにルールを形成しながら,そして,たくさんの誤りを繰り返しながら,ことばを覚えていきます。
それは日本の子どもたちの日本語の習得においても共通です。

childs や womans, goed や eated や speaked などの誤りに,

「よしよし,基本的なルールが分かってきたな」
と目を細め,誉め,励ましながら,長い目で正しい英語の習得を応援していく余裕が欲しいですね。

2 英語の基本は I / you / he / she / it

若林先生の講義を受けてから,私がつくるワークシートの例文や問題の順番は,基本的に

① I ② you ③ he ④ she ⑤ it ⑥ we ⑦ you ⑧ they
と,決めています。

○ 言語形式の理解を促すことがねらいであれば,主語をあれこれ変える必要はない。
○ 順番を固定し,生徒が安心して学べるようにした方が,よく定着する。

と考えたのです。

自作教材の「よく分かる英語教室」や毎日授業で使うワークシートも,基本的にこの順番で通しています。

3 「三人称単数現在」のつまずきを防ぐ

① I ② you ③ he ④ she ⑤ it ⑥ we ⑦ you ⑧ they
という順番を守ってワークシートをつくり続けると,子どもたちは

問題③,④,⑤は,主語が he / she / it だから気を付けよう。現在の文の時は必ず 【 s 】 がつくぞ。
と意識することができます。

これをくり返していくと,三人称単数現在をことさら意識しなくても,子どもたちは自然に三人称単数現在の 【 s 】 を身に付けていきます。
ルール : 現在の文では,be動詞 is の 【 s 】 が,一般動詞にもついていく。
こうなれば,現在進行形や現在完了の英文もそれほど苦労することなく理解し,覚えることができます。


以後,英語嫌いをつくらないために,私が行ってきた授業やつくってきた教材などを,順次紹介していきます。
「なるほど」と共感できるものがあれば,ご活用ください。